いにしえのタイ王朝が
さらなる美を求め、生みだした五彩の磁器。
その類まれな精緻さ、艶やかさ、まばゆさ。
600年の時を経ても
職人の筆によってのみ彩を得る
ベンジャロンの器。
いまもその器を手にする人に
たおやかな時を与えてくれる。
ベンジャロン(BENJARONG)とは、古代サンスクリット語で「5つの色彩」を意味します。
その源流は中国の明朝に発するといわれています。約600年前、中国からアユタヤ王朝に輿入れしたプリンセスが、皇帝だけが使う華やかな磁器を持ち込みました。その美しさに魅せられたアユタヤ国王は、陶工を中国に派遣し、当初はそこで製造されたものを輸入して使っていました。やがてタイで独自に発展し、中国では三彩であったものが、タイでは五彩のベンジャロンとなったのです。あくまで王室と貴族だけが所有し、代々その家に継承される貴重な磁器でした。
当時のアユタヤは世界中から商人が渡来し、アジア最大級の交易地として栄え、クメール、ヨーロッパ、ペルシャ、インド、中国などの文化が流入しました。日本人町も繁栄したといいます。そうした影響でベンジャロンのデザインも時を経てより華やかに、手法はより精緻になっていったと考えられています。
純金で描かれる咲き誇るバラや睡蓮の花とジオメトリックな文様、五彩に色付けされ、高温で焼き上げられる現在のベンジャロンへと……。
美を追求する伝統はアユタヤ王朝からトンブリ王朝、チャクリー王朝にも引き継がれました。名君チュラロンコンとして知られるラーマ5世は、19世紀、職人たちをイギリスに送り、ボーンチャイナの技術を学ばせました。そして職人たちはベンジャロンの技法を代々門外不出として次世代に伝えてきたのです。
ようやく王族・貴族以外の一般の人々にベンジャロンを手にすることを許したのは、ラーマ9世。ベンジャロンの美を誰もが愉しめるようになってから、まだ60余年にすぎません。
ベンジャロンは、美を追求するタイの文化の真髄であり、時を超えてタイを代表する特別な伝統工芸なのです。
約半世紀前、異国・日本から来た窯業技師の父・野村力。二人の幼い子供を抱えながら、1979年にそれまで長く勤めた日本の会社を辞め、バンコクに根を下ろすことを決意しました。
趣味の骨董品巡りで目にした美しい磁器ベンジャロン(BENJARONG)に心を奪われ、眩いかぎりのこの美しい磁器を、自らの手でも是非創り出したいという強い想いに憑かれたからでした。
その時、技師として培った窯を知る技術だけが、この挑戦の原動力でした。
ちょうど同じ時期に、セラミック産業が勃興しているタイへの進出を熱心に模索していた、江戸時代から続く老舗商社・伊勢久株式会社の高木明社長(当時)と出会い、海外初の現地法人の共同設立を打診された事で、この大きな決断の覚悟は固まりました。
協賛者を探し、出店場所を探し、絵付の職人はゼロから育てる覚悟でスタートしたのが、このタイ・イセキュウというささやかな会社の原点でした。
スタート時から伊勢久の高木明社長も自ら先頭に立ち、日本からの様々な支援を惜しみませんでした。一貫して原材料の品質にこだわり続け、そして育て上げた多くの絵付師たちと共に、時代を映した多彩なデザインを創り続けることが出来たのは、本物を創り出したいという創業からの強い想いがあったからに他なりません。
すべてハンドメイドで描かれたその艶やかな色彩と同様に、創業者から続く私たちのベンジャロンへの想いも朽ちる事がありません。
日々の穏やかな時間は、時代を超えた万人の願い。
そして、彩りのある豊かな暮らしを愛おしむこともまた、時代を超えた人々の愉しみです。
はるかいにしえの貴人も同じ思いで、この器を手に取ったことでしょう。
現在はシンプルでナチュラルなデザインの器が好まれる時代かもしれません。
けれども食卓に一輪の花を生けるように、ベンジャロンの彩りがそこに加われば、不思議なほどに当たり前の日常が華やかに踊り出します。
たおやかな時を楽しむ人と共に、暮しに彩りを加える愉しみを分かち合いたい。
いにしえのタイの貴人たちが大切に育んだ美の工芸を未来に伝えていきたい。
私たちは創業の想いを胸に、これからもベンジャロンで美しい彩りを創造してまいります。
Managing Director
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